ナースコールの音、モニターのアラーム、スタッフ同士の雑談、申し送りの声
看護師の職場は、常に大量の音があふれています。
聴覚過敏のある看護師にとって、これらの音は「ただのBGM」ではありません。
すべてが情報として脳に飛び込んでくるため、気づけば仕事が終わる頃にはぐったりしてしまいます。
体は動いているのに、脳が先に限界を迎える感覚です。
私はHSP気質を持つ40代の男性看護師パパです。
急性期病棟での勤務中、音の多さに長年苦しんできました。
「自分の集中力がないせいだ💦」「気の持ちようだ💦」と自分を責め続けた時期もあります。
でも、それはHSPの神経系の特性であって、意志の弱さではありませんでした。
精神科に転職してからも職場の音との付き合いは続きますが、少しずつ対策を積み上げて、消耗を減らすことができるようになってきました。
この記事では、「私が実体験から学んだ聴覚過敏対策を5つ」紹介します。
完璧な解決策ではありませんが、「同じように悩んでいる看護師に届けばいい」という気持ちで書いています。

聴覚過敏の看護師あるある
まず、聴覚過敏の看護師が職場で感じやすい「あるある」を整理します。
共感できるものがあれば、あなたもHSP気質かもしれません。
全ての会話に反応しなければという強迫感
ナースステーション内で誰かが話していると、それが自分に関係のない会話でも無意識に耳を傾けてしまいます。「聞き逃してはいけない」という意識が常にオンになっていて、精神的に緊張した状態が途切れません。1日の終わりには、何か大きな仕事をしたわけでもないのに、なぜかひどく疲れている——そんな経験が週に何度もありました。
情報が全部入ってきて勝手に疲弊する
他のスタッフが患者さんに説明している声、廊下の足音、ドアの開閉音——これらが同時に耳に入り、脳がフル回転で処理しようとします。本人は何もしていないつもりでも、無意識のうちに膨大なエネルギーを消費しています。「なんとなく疲れた」という感覚の正体は、多くの場合この音の処理過負荷です。
アラーム・申し送り・雑談が同時に刺さる
急性期病棟のピーク時間帯は、モニターのアラーム、申し送りの声、スタッフの雑談が重なります。一つひとつは大したことがない音でも、重なると頭の中が飽和状態になります。私はこの状態を「音の洪水に溺れている感覚」と表現しています。こうした状況は、意志の弱さでも集中力の問題でもなく、HSPの神経系の特性として起きていることです。
「今の自分に関係ない情報」と割り切る思考法
聴覚過敏への対策として、まず取り組んだのは「思考のフィルタリング」です。
以前の私は、職場で聞こえてくる会話のほぼすべてにアンテナを張っていました。
「何か重要なことを見逃したら大変だ」という不安が根本にあったからです。
しかしこの姿勢が、消耗の最大の原因でした。情報を受け取ることと、処理することは別の話です。
受け取り過ぎれば、処理が追いつかなくなって当然です。
転換点になったのは、「今これは自分に必要な情報か?」という問いを持つ習慣をつけたことです。
聞こえてくる音に対して反射的に処理しようとするのではなく、一瞬立ち止まって「自分のタスクに関係あるか」を判断するクセをつけました。
関係なければ、意識の外に置く。それだけです。
最初は意識的にやらないといけませんでしたが、数ヶ月続けると徐々に自動化されてきました。
関係のない会話が耳に入っても、以前ほど引きずられなくなってきたのです。この思考法は訓練で身につくものです。完璧にはなりませんが、「全部拾わなくていい」という感覚が持てるようになるだけで、一日の疲れ方がかなり変わります。
物理的な対策3つ
思考法だけでは対応しきれない場面もあります。そこで併用しているのが物理的な対策です。
① 距離を取って会話が聞こえない場所に移動する
ネガティブな会話や刺激の多い場所からは、意識的に物理的距離を置きます。
記録入力をスタッフステーションの端や静かな部屋で行うなど、「聴覚刺激が少ない場所」を探して積極的に活用します。
業務上どうしても必要な会話には集中し、それ以外の音は遠ざかることで入力量を減らします。
環境を自分に合わせるのではなく、自分が環境に合わせて動く——これが現実的な解決策です。
② ネガティブな会話にはノーリアクションを徹底する
職場での不満話や悪口の輪に入らないことを決めています。反応すると「続き」が来て、さらに情報量が増えます。
あいまいな相槌も避け、「そうなんですね」と言いながら静かに離れることを繰り返しています。
最初は「感じが悪いかな」と気にしていましたが、続けていると「あの人はそういうキャラ」として自然に受け入れてもらえるようになりました。
③ 休憩中は片耳イヤホンで意図的にインプットを切り替える
休憩室でスタッフの会話に巻き込まれないよう、片耳イヤホンで両学長のYouTubeを聴いたり、医療とは関係のない本を読んだりしています。
「仕事の音」から意識を切り離す時間を意図的に作ることで、後半の業務への消耗が減りました。
完全に遮断するのではなく片耳にとどめているのは、緊急時に対応できるようにするためです。

仕事とプライベートの切り替え
聴覚過敏の辛さは職場だけに留まりません。帰宅後も「今日のあのアラームが頭に残っている」「あの会話の内容が気になって仕方ない」と引きずることがあります。
私が意識しているのは、職場の音・情報とプライベートの時間を明確に切り分けることです。
具体的には、仕事終わりに「今日の職場のネガティブな情報はここで置いていく」と心の中で宣言するようにしています。儀式めいていますが、これが意外と効果があります。
脳に「モードが変わった」というサインを送ることで、帰宅後の反芻を抑えられるようになりました。
一方で、家族の話——子どもの「今日ね、こんなことがあったよ」という声は、しっかり受け取ると決めています。職場の刺激を遮断したぶん、家族に向けるアンテナは開いておく。
このオンとオフの境界線を意識的に引くことが、HSP看護師が家庭でも消耗しないための大切な習慣です。切り替えがうまくいった日は、就寝前の反芻思考も明らかに少なくなります。
職場環境の音を意識した転職の話
私が急性期病棟から精神科に転職したきっかけのひとつに、「音の問題」がありました。
急性期病棟は、生命に直結するアラームが常に鳴っています。コードブルーの緊急コール、人工呼吸器のアラーム、複数のモニター音——これらは命を守るために必要な音ですが、聴覚過敏のある私には慢性的なストレス源でもありました。
「この音環境で何年も続けられるだろうか」と思い始めたとき、転職を真剣に考えるようになりました。
精神科は比較的静かな環境です。
もちろん患者さんの声や集団プログラムの音はありますが、急性期と比べると格段に音の密度が低い。転職してしばらくは「静かすぎて逆に落ち着かない」と感じるほどでした。
それほど急性期の音に慣れきっていたということでもあります。
転職先を選ぶ際に音環境を確認する方法として、私が実践したのは「見学時に耳を澄ませること」です。
病棟見学の際、意識的にどんな音がどのくらいの頻度で鳴っているかを観察しました。アラーム音の多さ、スタッフの会話の声量、廊下の騒がしさ——これらは実際に足を運ばないとわかりません。転職エージェントに「職場見学をアレンジしてほしい」と伝えると、対応してもらいやすくなります。
まとめ
聴覚過敏の看護師が職場で実践できる5つの対策を振り返ります。
- 思考のフィルタリング:「今自分に必要な情報か?」と問う習慣をつける
- 物理的な距離:刺激の少ない場所に移動し、音の入力量を意図的に減らす
- ノーリアクション:ネガティブな会話には反応せず静かに離れる
- オンオフの切り替え:退勤時に「職場の音を置いていく」儀式を持つ
- 音環境を見て転職先を選ぶ:病棟見学時に耳を澄ませて音の密度を確認する
完璧にやろうとしなくて大丈夫です。5つのうち1つでも取り入れられれば、それだけで少し楽になれます。HSP気質は弱さではありません。自分に合った環境と方法を見つけながら、無理なく続けていきましょう。

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